真っ赤な箱にリアルな牛のイラスト、という要素が同じなので「赤箱はずっと一緒のパッケージ」と思っている人がいるかもしれませんが、実は赤箱のパッケージデザインは時代や流行に合わせ、少しずつ変化しています。それぞれの時代の流行を振り返りながら、初代から最新版まで、約100年にわたる赤箱パッケージの変遷を紹介します。
Index
1928年
存在感のある牛が特徴の初代赤箱
初代赤箱には、どっしり丸々とした立派な体躯の牛がリアルタッチで描かれています。和装が主流の時代でしたが徐々に洋服を着る人も増え、「モボ(モダンボーイ)、モガ(モダンガール)」と呼ばれる若者も登場。帽子や手袋、ロングネックレス、ひざ下丈のスカートというハイカラなファッションを楽しんでいました。髪型はフィンガーウェーブのショートヘア、深紅の口紅をさした“おちょぼ口”が好まれ、クリームを使ったマッサージ美容法も人気を博しました。
1949年
2代目の牛は少しスマートに
2代目の赤箱は戦後間もない時期に登場。牛の柄の入り方が少し変わり、体形も少しスマートになりました。『麗しのサブリナ』『ローマの休日』(ともに1953年公開)が大ヒットした影響で、オードリー・ヘップバーンがおしゃれのお手本に。サブリナパンツやネッカチーフなど、映画の中でヒロインが着用した衣装から新しい流行が次々生まれました。角度をつけた太眉、キリッと跳ね上げたアイラインなど、当時の流行メイクにも時代とリンクした力強さが表れています。
1967年
名称が「Beauty Soap」に
「Toilet Soap」から「Beauty Soap」へと変更し、都会的な印象に。牛乳が牛から流れ出る描写もなくなりました。このころ、自由と平和を愛するアメリカの若者から生まれたムーブメント「ヒッピー」が日本にも上陸。ヘアバンドを巻いたロングヘア、カラフルな柄シャツ、ベルボトムというスタイルが人気を集めました。淡いシャーベットトーンの口紅やパステルカラーのアイシャドウが登場し、メイクの幅が一気に広がったのもこのころ。
1968年
「Beauty Soap」が
筆記体に
牛の絵を少し小さくして円で囲むと同時に、名称の「Beauty Soap」を中央に大きく配置。すっきりとしたデザインになりました。このころ、“ツイッギー(小枝)”の愛称で親しまれたイギリス人モデルが来日したことでミニスカート旋風が巻き起こり、ひざ上20㎝のマイクロミニスカートやショートヘアが多くの女性の憧れの的に。健康的な小麦色の肌と白肌への憧れが共存した時代でもあり、日焼け肌をいたわるためのパックや美白コスメが次々登場しました。
1974年
牛をリボンで囲んで華やかに
背景の色が少しピンクがかった赤に。不景気な時代でしたが、ファッション界では女子大生を中心に「ハマトラ(横浜トラディショナルの略)」が大流行。「フクゾー洋品店」の洋服、「ミハマ」の靴、「キタムラ」のバッグが三種の神器と呼ばれ、ポロシャツにひざ丈の巻きスカート、ハイソックスとローファーを組み合わせるのが定番でした。メイクはナチュラルメイクが主流に。肌そのものの美しさが重視されるようになったこともあり、家庭用美顔器が大ヒットしました。
1976年
牛の足元の芝生が元気よく
背景の色が赤色に戻り、リボンの色も鮮やかなゴールドに。1979年には原宿の歩行者天国に「竹の子族」が登場し、一大ブームに。色鮮やかな衣装で繰り広げられるダンスパフォーマンスを見るために、全国から見物人が集まりました。また、このころ日本人モデルが海外コレクションで活躍しはじめたこともあり、ヘアメイクにおける欧米志向が一段落。キメ細かな肌、切れ長の目もと、切りそろえたボブヘアなど、日本人ならではの美しさに注目が集まりました。
1984年
「COW」のロゴがすっきり
牛を囲んでいたリボンが消え、「COW BRAND」の表記を2列に整理したことですっきりとしたデザインに。時代はアイドル全盛期。聖子ちゃんカットやポニーテール、パールピンクのリップなど、アイドルのヘアメイクをまねる女性が街にあふれました。一方で、全身黒ずくめのファッションに太眉・赤リップを合わせる「カラス族」も登場。メイクやファッションだけでなくスキンケアの細分化も進み、年代別のスキンケアや敏感肌用コスメも充実しはじめます。
1986年
よりシンプルなデザインに
「NEW」の文字が消え、さらにシンプルに。時代はバブル真っ只中。タイトなミニワンピース&ロングヘアがトレードマークの「ワンレン・ボディコン」スタイルが社会現象になりました。髪型は、前髪をトサカのように立ち上げたワンレンとソバージュが人気を二分割。外資系コスメブランドも続々上陸し、青みの強いビビッドなリップを使ったメイク、美容液を使うスキンケアが定番になりました。“朝シャン”やはがすタイプのパックが流行したのもこのころ。
1994年
「COW」と牛がセンターに
「COW」と牛のマークを中心に配し「Beauty Soap」の文字も大きくなりました。世間ではバブル景気が崩壊し、ファッションも落ち着いた雰囲気に。女子高生を中心とする若い女性の間ではルーズソックスが大流行し、茶髪・細眉・寒色系アイメイクで厚底ブーツやミニスカートを着こなす「コギャル」文化が定着。美容界では、ボディ用スリミングコスメが爆発的にヒットしたほか、毛穴パックや小顔ケア、ビタミンコスメなど多様な美容トレンドが次々生まれました。
2013年
史上初「赤箱」の名前を配置
赤い四角の角を丸くして、やさしくやわらかいイメージにリニューアル。東日本大震災を機に世の中もナチュラル志向へと変化し、ファッションやメイクも「ゆるふわ」にシフト。ゆったりとしたワンピースが定番の「森ガール」、アウトドアウエアを山でも街でも愛用する「山ガール」が注目されました。このころからプチプラコスメ、アーティストブランド、韓国コスメなどコスメの選択肢が一気に増加。空前の美容ブームが巻き起こり、美白ケアやエイジングケアの人気も高まりました。
2015年
「COW」のロゴが金色に
洗い上がりの特長「しっとり」が入って青箱との違いが分かりやすくなりました。「COW」ロゴも華やかな金色にチェンジ!
Summary
“前に進んでも後ろに退くな、粘り強く前進せよ”という意味を持つ「商いは牛の歩みのごとく」という格言があります。これが堅実な経営のもと誰からも愛される製品を提供しようという企業姿勢を象徴しており、まじめで親しみがある動物ということから、牛は牛乳石鹸のシンボルとして大切にされてきました。
赤箱のパッケージは時代とともに少しずつ変化してきましたが、牛のマークの「目元は愛らしく、しっぽは行儀よく、足元は清潔に」というポリシーはしっかりと受け継がれています。
今度赤箱を見かけたら、牛のマークやデザインにも注目してみてくださいね。